電気メスのご紹介
当然ではありますが手術をすれば血が出ます。皮膚からなどの多少の出血は患者さんの止血能力がしっかりしていれば自然に止まりますが、もちろんそうはいかない太い血管もあります。特に動物病院で最も実施する機会の多い去勢・避妊手術を行う際にも太い血管に遭遇します。今までは糸を使って血管を結紮(しばること)して止血していました。実をいうと特に犬の避妊手術で必ず処理しないといけない卵巣動静脈という血管は周囲を脂肪で覆われ、しかもそれなりに太いため処理を誤ると大出血を起こすというなかなか厄介な血管で、犬の避妊手術(特に大型犬)は一般的な手術とはいえ比較的難易度の高い我々獣医師の登竜門的な手術でした。こういう手術をこなすことでしっかりとした技術が身につくので、これはこれで大事なことなのですが、やはり危険性が低いに越したことはありません。
当院では数年前より血管シーリングが可能な高機能電気メスを導入し使用しております。電気メスというのは電気の力で組織を切断したり、小さな出血を止めたりという使い方が一般的でしたが、この機械に装着可能なバイポーラーデバイスを用いれば、端的に言えば血管を溶接して止血できます。5mmまでの太さの血管を処理可能で、一般的な手術で扱う血管の止血には対応可能です。
メリットとしては手術時間の短縮、手術の正確性・安全性向上が挙げられると思います。また、縫合糸由来の合併症が最近は報告されておりそのリスクを減らすという意味合いでも有意義だと思います。しかしながら、縫合糸を完全に使わない手術というのは実際問題不可能で(切ったところは縫わないといけないですし)、こちらの問題に関しての当院の考え方は極力リスクが少ないと言われている高品質・低刺激の縫合糸を使用することで対応しております。
デメリットはコストの問題が一番です。あとは万が一の機械故障の際に困るかなというところです。